相場にとらわれない生き方
何者にも相場があります。値段を自分で決めることができる立場にあるフリーランスは、値段決めに困ります。
僕も例に漏れずです。ファイトマネーはある程度の相場感というか、自分自身の価値を把握しているし、相手の団体の懐事情も団体を取り巻く状況も察しがつくからこそ、着地点を見つけやすいです。それだけであればいいのですが、僕のように格闘技選手である意識を強く持たなければ忘れてしまう程度だと、格闘技以外の仕事の方が多いことがあって、値段を聞かれて困ってしまうことが多いです。値段交渉をせず、「はい喜んで」と受けてしまうことが多く、その方がお互いに気持ちよくできると思っているタイプです。交渉しないで損をしているとなっても楽しくできたり、結果的に他の仕事が舞い込んでくればいいと思ってしています。
それはそれとして。池袋にある「カリー プンジェ(curry Punje)」が満を持して(待ち過ぎたかもしれない)新メニューになりました。その名もビリヤニ風ポロウ。毎回今までにないカレーを提供してくれるプンジェ。今回の仕上がりは今まで以上に素晴らしく、看板の「スペシャルウィーク」の文字も納得です。
SOUBA。そうば。そうです。相場です。スパイスカレーの相場は1200円前後なようでプンジェのカレーも1200円を頑に守っています。大盛にしても値段は変わらないし、オプションで単価を上げる姿勢もなく、「もう少し値段をとってくれても」の気持ちの行き場がないです。他にはないカレーだから、値段も相場を意識しないでいいとは思うのですが、飲食業を営む方は値段に対しては慎重だし、怖がっているようにさえ思っています。
プロレスラーで先日「捻くれ者の生き抜き方」を上梓された鈴木秀樹さんが「ギャラは自分がいいと思った額」にしているから、高い安いはわからないし、何故ならば比べていないから高いも安いもないと仰っていて、同じ無頼派として生きるレスラーとして、共感した次第です。
僕は値段にはシビアな方です。職人のこだわりや腕にはお金を払いたいけれど、ただ名前のあるものにカネを出すほどカネもなければ、気も大きくないです。そんな僕がもう少しお金をとってほしいと感じたプンジェなのですが、如何せん課金するものがないのです。だってカレーとチャイしかないんだもん。こんなときのためにチップ制度があるんだなって思った次第です。
改めて思うのは、個人のお店ほど一定のファンの支持が大切だということです。それは格闘技選手も同じで、多くのファンよりも(多いに越したことはないのかもしれないが)、根強い深く刺さったファンがいるのが健全な姿だと思うし、芸事は一部の支持者に支えられてきたルネサンス時代からの伝統的なスタイルです。個人の店はこだわって、いいものを出して、値段は上げることはあっても下げないでほしいと思っています。それが豊かな社会を作ることだと僕は思っているから。
11月15日の日曜日はプンジェで食べて、我らがCHANCE THE CURRYさんが出陣しているカレーイベントに押し掛けるカレーデイでした。どうやらカレーが好きみたいです。人と比べたことがないから、特別好きだと思ったことはないのですが、カレーが好きだねと言われることが多いです。確かに週に3〜4日はカレーを食べています。
CHANCE THE CURRYの親方が作ったカレーが美味しい。僕が出会った頃、彼はカレー屋さんではなかったのですが、いつの間にかカレー屋さんになっていて、それもこんなに美味しいカレーを出すようになってるのだから、人生って何があるかわからない。人はいつだって変われる!と言いたいところではあるけど、変われるところもあるし、変われないところもあるし、人や環境によっても違うとは思います。変われることは希望ではあるとは思うけれど。
世の中が疲弊しています。ウェブの記事がボヤ騒ぎを起こしているのをよく見るし、格闘技イベントも取りあえずイベントをして回すのが精一杯で、作り手もファンも互いに落ちつけないというか、労いがないように感じています。誰が悪いわけでもないのですが、全世界共通でストレスがかかる状況です。
こんなときこそ一度立ち止まって、互いに労いを大事に、歩みを止めて、豊かさを感じて生きていけたらなと思います。