魚と夢追いベンガル
はじめまして、カレー活動家のミサと申します。
カレー活動家という、結果何してるかよくわからなくなるタイプの肩書きですが、その活動の一環で今年4月にベンガル(インドの 西ベンガル州からバングラデシュにかけての地域)の魚料理をめぐる旅をしてきました。
インドの西ベンガル州には以前からどうしても行きたい場所がありました。
それは町屋の「プージャー」というベンガル料理店で働くションチータさんの実家。コルカタから電車で2時間、さらに駅からバイクで30分と決して近くはありませんが、ションチータさんが守りたいと言っていた、この農村に伝わる郷土料理を少しでも学びたかったからです。
実家のあるサンティニケタンは、インドの国歌をつくった詩人・タゴールの所縁の地でもあり、アーティストをも魅了する豊かな自然を求め国内外から旅行客も多い地域です。
おそらく住民の反応から、一家庭の料理だけ習いに来て帰った旅行客は他にいないだろうと推測しました。
友だちの実家に単独でお邪魔するのは日本でも珍しいかもしれませんが、一人でやってきた謎の日本人(しかも初見)を、一家は全員快く迎え入れてくれました。
近所の市場で必要な食材を購入し、いざ調理!英語が通じないこともあり、ベンガル語の食材の名前だけで会話していきました。
母「アルー!」
私「アルー!」
もう伝わるごとに大盛り上がり。(ちなみにアルーはジャガイモです。ジャガイモー!)
そんな感じで優しいお母さんが、やたら厳しかったのが火加減。薪で火加減を調整するのも料理上手の条件で、牛の糞を藁と一緒に乾燥させたものを焼べて(くべて)温度を上げます。
ベンガル料理で多用されるマスタードオイルを鍋に入れて加熱しながら、水を散らして「ジャッ」と音を立てて蒸発したら、ホールスパイス、野菜を投入します。
調理と並行して、主役の魚をとらねば!と、
おばあちゃんの指示のもと、お手伝いさんが家の前の池に網を投げます。
幸運なことに、10分足らずで「ボアル」という魚をゲット!しかもラッキーな卵付き。
身はターメリックをまぶして、卵はそのままマスタードオイルでフライに。伝えたい、この揚げたての神々しさ…。
フライしたボアルの身使って作ったのはトークジョール。タマリンドの酸味が効いたシャバシャバ系フィッシュカレーといいましょうか。「ボリー」という豆の加工食品を入れることで、マイルドさと食感が加わります。そこへ、表面カリッと中ふんわりなボアルが入ると、もうそれは絶妙なバランスです。
同時進行で作った料理と一緒に(紹介しきれなくて残念!)もちろん手食でお腹いっぱいいただきました。
泣いてお母さんと抱き合うウルルン滞在記さながらの帰り際、「カレーがなければ人生の半分無駄にしてたかもしれない。」と本気で思いました。