ミニマルなアレンジが少しずつ爆発して宇宙に届いちゃう春菊コルマ
鎌倉 和田塚は「鎌倉バワン」にて『スペシャルミールス』を。
乾ききっていた2月の空は最後の最後で潤すように雨を落とした。江ノ電に揺られ、小説を読みながら、僕は向かう。鎌倉や葉山が生活圏内となる高校生は、なんとなくカッコイイ。海と緑が映り込む青春が日常にあるからだろうか。そのまんまポカリのCMとかになりそうだ。
鎌倉バワンは、ずっと行きたかったお店だ。お友達のなっちゃんがこちらでアルバイトを始めたと聞き、いてもたってもいられなくて訪れた。この界隈は、オクシモロン、san curry、最近では檸檬、もうちょっと足を伸ばせばスパイスツリーと、神奈川カレーの天国だ。そう言えば近くに極楽寺もあった気がする。
雨足は強く風はビニール袋を煽るが、足取りは軽い。見つけた。インドとモダンが重なる店構え。磨りガラスの奥でなっちゃんが微笑んでる。
まずは、お店の暖簾から大好きなイラストレーターの苦虫ツヨシ先生の作品を撮りまくる。妄想インドカレー ネグラさんや、ポニピリカさんのイラストも彼の作品だ。カレーとは縁が深い。
鎌倉のアートフェスで、たまたま、お店の担当展示アーティストになって作品を置きそのまま譲り受けたらしい。羨望の眼差しを全力でキッチンの奥に送る。店主の伊藤さんがイヒッと笑う。
さて、カレー。
南インドです。
しみじみと、懇々と、
最後まで猛烈に美味しかったです。
もう本当に素敵なスペシャルなノンベジミールスだった。ノンベジだけど特に春菊と蓮根のベジタブルコルマは逸していた。
この心地よい苦味。素材を壊さない蓮根の火入れ。派手じゃないがミニマルなビートがエンドルフィンを増大させる。ちょっとした日本素材のアレンジの筈だ。なのに、世界は南インドを超えて宇宙に繋がった。
そこにポークビンダルゥー。逞しく、荒々しくゴアの海岸を再現する。使ってる酢はワインビネガーではなく、普通に穀物酢だそうだ。ここにインド旅行で買ってきたココナッツの蒸留酒を入れているらしい。
素晴らしい甘みと、辛味と、発酵の魔力が広がる。
複雑になった口内を白菜のクートゥで治める。優しい。慈悲の味。
気づくと僕は手食でラッサムとサンバルとライタを混ぜて、銀のプレートをすっかり綺麗にしていたのだった。
最後にチャイを。至福の時を。カレーの神様ありがとう。
鎌倉は臨済宗で有名な土地だけど、どこかこのミールスも禅につながる気がした。超オススメ店です。
訪問日