賭場から降りなきゃ破産しても大丈夫
プロレス参戦の為に東京から博多までバス移動。飛行機も新幹線も選択肢にある中で38歳でのバス移動。文字にするとなかなかに厳しいのだけれども苦しく感じることはなく、むしろファン時代に憧れていたプロレスバス移動でもあったので、ワクワク感がなくなる前に到着して疲労感を感じることはありませんでした。
プロレスは国内の移動はバス移動が基本です。東京から博多までも20時に出発して11時に到着するスケジュール。移動経費や荷物を考えてなど現実的な要因はあれど、ファン時代に憧れた選手バスで移動できるのは夢が叶った瞬間でもあって、特別感がなくなるまでは楽しい時間なのだと思います。それでも寝るに寝れなかったりと、試合翌日くらいにそれなりの疲労感を感じたのは38歳の年齢を感じます。若いときのように押し切ることができなくなりました。
博多に到着して試合まで空き時間があったので、15年来の友人と食事に行くことにしました。
友人は僕の好きなものを把握しているので自然とカレー屋さんに足が向かいます。レトルトカレーが全国的に発売されている有名なカレー屋さんらしく、それなりに期待感を持って入店したのですが、何が有名なのかも下調べをしていないから無難なランチセットでチキンカレーを注文することにしました。朝ごはんを食べずにお腹が空いていたことに加えて、格闘技選手でプロレスラーだと見栄を張る意味でも大盛りを注文。小食の僕には見栄でありなかなかの博打です。
友人が頼んだカレーが友人の知人牧場の豚肉を使っているようで地方のコミュニティの強さを感じます。地方は辿っていくと知り合いに行き着くのです。せっかくなので頂くことにしたのだが、辛かった。美味しかったけれども辛かった。豚の味よりも辛さを覚えています。豚肉屋ではなくカレー屋さんだからカレーの味が記憶の残るのは当然なのだけど、豚肉をもう少し前に出して欲しかった。身内贔屓である。
食事中に友人がいつもと変わらない口調で「破産する」と僕に告げます。僕は驚くこともなく「そうか」と話して世間話のように話を進めます。そういえば数年前に月末で支払いに追われる友人に「払えない」と言えば立場逆転するとアドバイスした記憶があって、見事に立場逆転して感謝されたことがあったので「遂に詰まったのね」と思いました。格闘技業界で未払いが横行していた時期を見てきました。その中での人間模様で学んだのは「カネは払うヤツが強い」ことであって、払わない側が開き直ったらどうしようもありません。谷川貞治さんは元気ですかね。
驚いたり心配するのが普通なのかもしれないけれど、僕の周りには不倫、離婚、破産は珍しい話でもなく、お縄を頂戴しないでさえいてくれたら大きく関係は変わることがないし(何があろうと友人であることは変わらない)、助けられることがあったらいつでも助ける関係です。自分の名前で生きていたら「いつどうなるかわからない」のだから、自分自身に明日起こりうる話なのです。博打を打つ人生はそんなもんであって、またいつ博打を打って勝つかもわからないのだから、賭場から降りさえしなければいつだって逆転する可能性はあります。むしろ、破産するくらいに勝負を賭けられる人間には可能性しかないと思っています。
また何か勝負するのだろうし、勝負したくなるだろうから次は何をするかって話とバカ話をしていた。その友人が大腿四頭筋の外側が発達している女性はオーガズムを感じやすいと持論を力説していて大丈夫だと確信しました。打たれ強い。こういうのはすぐ浮上するタイプの人間の特徴だ。
カレーが美味しかった。話が湿っぽい話だったから余計に美味しかったのかもしれない。ココナッツミルクが効いた味は辛いけれど甘さが残る味でよかった。運ばれてきたときは食べきれないと覚悟したけれど、普通に完食できたから美味しかったのだと思います。理屈をこねるよりも本能が欲するかの方が大事だと僕は思っています。美味しいものは食べられます。
会計は友人が払ってくれた。破産するはずなのに相変わらずに気持ちがいい。
生きていると色々なことがあるけど、それでも前を向いてコツコツ生きていくことが最善なのだよな。