メキシコのモーレはカレーなのか?
ここ数年ずっと気になっていたこの答えを探して、昨年11月頭にメキシコ・オアハカを訪ねました。
モーレとは、メキシコの伝統的なソースで、特に美食の街オアハカでは7色のモーレがあることで知られています。
日本でもワカモレ(アボカドのモーレ)やモーレ・ネグロ(黒のモーレ)を提供するメキシコ料理店は見かけますが、モーレ・ロホ(赤のモーレ)は滅多に食べられません。
そう、そのモーレ・ロホが、私の追い求めたモーレだったのです!
メキシコシティから飛行機で約1時間半、オアハカは「死者の日」一色に染まっていました。映画「リメンバー・ミー」で描かれた、街中がマリーゴールドで溢れるお祭りです。
オアハカで伝統的な家庭料理を教えているAgustinさんと、街の中心の広場で待ち合わせをして、歩いて5分ほどの有名な市場に食材を買いに向かいました。
入るなり、チリとソルトを纏ったバッタと芋虫が目に飛び込んできます。オアハカでは虫も立派なごちそう!タコスのトッピングとしても人気です。
そして、驚きのチリ専門店へ!南米原産のスパイスということもありますが、何十種類もの形・色・香りの異なるチリが、ところ狭しと並んでいます。全種類買い占めたい気持ちを必死に抑え、モーレ に使うチリを買ってAgustinさん宅に向かいます。
この日は私以外に、アメリカからメキシコ料理を習いに来たシェフや、その友だちと料理を教わることになっていました。メキシコのお酒「メスカル」で乾杯し、トルティーヤやサルサを作ります。そしてフィナーレは、待ちに待ったモーレタイム!
モーレ・ロホは3種類のチリを使います。
チリは乾燥前と後で呼び名が変わるのも面白い!種を取りのぞき、から炒りしてお湯でふかやし、裏ごししてペーストにします。
そして玉ねぎ、スパイス、ナッツ、バナナ、パンを油で揚げて、ペースト状にしたものと、トマトピューレ、鶏のスープを合わせて煮込みます。
一煮立ちしたら、オアハカの名物のチョコレートを投入しよく混ぜ、スープと分けておいた茹で鶏を投入し、塩で味を整え出来あがり。
盛り付けは、メキシコのライスとともに。見えますか?ビジュアルも完全なるカレーライスなのです!
そしてその味は…ナッツやバナナのコクとまろやかさ、チョコレートの甘さとビター感。そして華やかなスパイスの香り!まるで欧風カレーのような味わいでした。
帰国して、この興奮をインドの家庭料理に精通しているネオカルチャーの曽我部くんに伝えました。そして一緒に「並行世界料理」と題して、インドから遠く離れたメキシコで確立された、このカレーによく似た料理をみんなに食べてもらうイベントを開催しました。
「カレーですね!」というお客さんの反応に、嬉しくてメスカルが止まらない。そのスモーキーな香りに酔いしれながら、マリーゴールドに彩られたオアハカに思いを巡らせました。
「そうだ、インドでもマリーゴールドの景色を見たな…」
まさにカレーが私に素敵な並行世界を見せてくれた瞬間でした。
死者の日は、家や街中の祭壇、ご先祖様のお墓に、マリーゴールドの花を飾ります。
その美しさに、あらためて、このお花が大好きになりました。